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文鳥

文鳥・夢十夜 (新潮文庫)文鳥・夢十夜 (新潮文庫)
(2002/09)
夏目 漱石

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文体というか文章が素晴らしく美しい。
そして信じられない精密な描写。
写実主義を意識したかどうかはわからないけれどすごい。

文鳥はつと嘴くちばしを餌壺の真中に落した。そうして二三度左右に振った。奇麗に平ならして入れてあった粟がはらはらと籠の底に零こぼれた。文鳥は嘴くちばしを上げた。咽喉のどの所で微かすかな音がする。また嘴を粟の真中に落す。また微な音がする。その音が面白い。静かに聴いていると、丸くて細こまやかで、しかも非常に速すみやかである。菫すみれほどな小さい人が、黄金こがねの槌つちで瑪瑙めのうの碁石ごいしでもつづけ様に敲たたいているような気がする。
 嘴くちばしの色を見ると紫むらさきを薄く混まぜた紅べにのようである。その紅がしだいに流れて、粟あわをつつく口尖くちさきの辺あたりは白い。象牙ぞうげを半透明にした白さである。この嘴が粟の中へ這入はいる時は非常に早い。左右に振り蒔まく粟の珠たまも非常に軽そうだ。文鳥は身を逆さかさまにしないばかりに尖とがった嘴を黄色い粒の中に刺し込んでは、膨ふくらんだ首を惜気おしげもなく右左へ振る。籠の底に飛び散る粟の数は幾粒だか分らない。それでも餌壺えつぼだけは寂然せきぜんとして静かである。重いものである。餌壺の直径は一寸五分ほどだと思う。

文鳥ではないけれどインコを買っていた時期があるので
この小鳥の様子がいかに的確なものかよくわかる。

そして漱石の小説にしては文鳥から女性の妙になまめかしい連想の描写が珍しい。

昔むかし美しい女を知っていた。この女が机に凭もたれて何か考えているところを、後うしろから、そっと行って、紫の帯上おびあげの房ふさになった先を、長く垂らして、頸筋くびすじの細いあたりを、上から撫なで廻まわしたら、女はものう気げに後を向いた。その時女の眉まゆは心持八の字に寄っていた。それで眼尻と口元には笑が萌きざしていた。同時に恰好かっこうの好い頸を肩まですくめていた。文鳥が自分を見た時、自分はふとこの女の事を思い出した。この女は今嫁に行った。自分が紫の帯上でいたずらをしたのは縁談のきまった二三日後あとである。
気難しいばかりの漱石が文鳥に心動かされて
見せるその心情が垣間見れて素敵な小品。

それにしても最後に文鳥の死を家人のせいにして終わるのはなんとも解せない。
文鳥の死について自分の咎については全く無自覚らしいのが信じられない。
私はなついていたインコがいつの間にか足もとにいたのを知らずに踏んで死なせたり、
エサをやり忘れて死なせたという経験も持っているのでなおさらに。
明治の時代性と読み解く方もおられるけれど
人の心を読み解くことに長けた漱石がと思うと時代のせいにするのも割り切れない。


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彼岸過ぎまで

彼岸過迄 (新潮文庫)彼岸過迄 (新潮文庫)
(1952/01)
夏目 漱石

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う~んようやく読み終えた。
敬太郎が仕事探しの彷徨をしている間は
単にその職を斡旋してくれる気のおけない友人くらいに
描かれていた須永が何時しか俄然主人公になってくる。
そして漱石の心理描写が脂ぎってくる。
人間てここまで考えて行動するあるいは行動しないものかと、、。
結局私は考えるべきものがない下働きの作や疑うことを知らない純粋な千代子の
部類で単純素直な感情に支配されながら生きているにすぎない?
しちめんどくさい堂々巡りの逡巡が繰り返されながらも
小説としては面白くなってくるのは解説にもあるように
時代状況・男女関係・親子関係・さらに自己自身の関係が深まっていることにある。
高山先生は彼岸過ぎまでを『探偵』という言葉で読み解かれていたが、
このことは解説(柄谷行人)にもかなり詳しい。
探偵というジャンルについてだけでも漱石は特別の人だった。
そんなことについては今まで考えたこともなくて
作品読むについてそれが必要かどうかも分からないけど
明治の時代に生きる重さを背にしっかり背負い込んでいる。
とっつきにくかった漱石に少しなじんできた気配。

空也上人がいた

空也上人がいた (朝日新聞出版特別書き下ろし作品)空也上人がいた (朝日新聞出版特別書き下ろし作品)
(2011/04/07)
山田太一

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ヘルパーと老人とケアマネと、介護の現場で風変わりな恋がはじまる。ぬぐいきれない痛みを抱える人々と一緒に歩く空也上人とは?都会の隅で起きた、重くて爽やかな出来事。

これって風変わりな恋の物語?
最初のプロローグの2ページが介護する人のある時の気持ちを的確に表している気がする。
介護の現場にこんな気持ちが一瞬たりとも介入しないと
言える人がいるのかなと。
一昨日山田さんがおっしゃっていた
理念と感情のはざまにある人間。
そして死を常に感じる81歳の吉崎さんがいちばん冷静で理念的かと言えば
彼とて思いがけず、自分でも御しがたい感情に驚かされる。
一方で確実に衰退する肉体といつまで生きるかわからない日々。
自分で決着を付けられない未来と
消しかねる過去の業にさいなまれる吉崎さんが
最後にかかわりたいと思った46歳の重光さんと27歳の若い中津と。
それぞれの傷みに寄り添って一緒に歩いてくれる空也上人がいるよとどうしても告げたかったメッセージ。
それはこれが最後の小説という山田さんがどうしても書きたかったこと?
私も六波羅蜜寺に空也上人を訪ねておきたいと切に思う。
ひとりで生きる老後に空也上人がいてくれればどんなに心強いことか。
虞美人草 (新潮文庫)虞美人草 (新潮文庫)
(1951/10)
夏目 漱石

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やっと読み終えた。
前半は盛り上がりにかけ、難解な文体に手こずるけど
後半は人物像が際立ってきて話も予想以上に急展開。
藤尾の死は唐突に過ぎる気もするけれど
叙述が古風な一方で会話は生き生きと現代風。
三組の男女に絡む高齢の3人が単なる恋愛小説ではない
奥行きと明治という時代を感じさせる。

リンゴが教えてくれたこと (日経プレミアシリーズ 46)リンゴが教えてくれたこと (日経プレミアシリーズ 46)
(2009/05/09)
木村 秋則

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木村さんの本の3冊目。
小さな庭と言えども花を植え木を植え、ささやかに野菜を植えれば
農薬は使わないにしても鶏糞や牛糞・堆肥は使っていたし、
雑草取りにうんざりし、
虫たちの被害に音を上げそうにもなっていた。
でも自然栽培を念頭に考えて育てたいなら
もっと自然に沿って花や野菜を考えないと。
生活が懸かっているわけではないけれど
雑草や虫も含めて自然や食について考え直すいいきっかけ。
いい本といい人に巡り合えた。

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