あの頃輝いていた高橋和巳。でも私には難しそうで
手にしたのはこの本だけ。
捨てきれずに書棚にあって朽ちかけていたのをきっと
もう2度とは読まないと思いつつ読んでみた。
組合運動がもはや衰退してしまったことがあまりに時代を感じさせる。
活動のなんであるかなんてことは理解できなくても
その雰囲気に触れたくてその頃見栄で読んだとしか思えない。
今読むと実りの少ない身体も心も思考力もすり減らす組合活動の描写は
現実感に乏しいが久米洋子との関係や妻や妹との関係は
いまも充分読み応えがあり、
結構比重も大きかっことに気づかされる。
そして当時の女性の立場から言えばそうだったかもしれないが
やはり高橋和巳の女性像の限界みたいなものも感じる。
一方で男としては社会的な立場を維持するために
久米洋子を守りきろうとしないふがいなさなどは
まさにそうなんだろうな納得する。
それにしても久米洋子までふがいない女性に描くなといいたい。
60年代や70年代に愛された高橋和巳の清冽な印象が
よみがえって久し振りに高揚した気分で読んだいたかも。